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【ラグビーワールドカップ目前!】lecca×野澤武史対談

2019.09.18
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ラグビーワールドカップ、開幕が目前! 街中やTVでも、ラグビーに接することが増えてきました。でも今になっても、「ラグビーってちゃんと見たことない」とか、「ルールがよく分からない」という人もまだまだ多いはず。そんな方々のために、去る9月8日(日)、エイベックス本社にて「ラグビーワールドカップを100倍楽しむ方法」というイベントが開催されました。
登壇したのはスポーツにも縁が深く、ラグビーをテーマにした新曲「team try」も配信開始されたleccaさんと、元ラグビー日本代表の野澤武史さん。このイベントの様子をお伝えするとともに、終了後にお二人に大いに語っていただいた対談をお送りします!


貴重映像も!? 盛り上がったトークイベント

 

9月8日(日)、東京・南青山のエイベックス本社にて行われたトークイベント「ラグビーワールドカップを100倍楽しむ方法」。まず、現役時代は神戸製鋼に所属し日本代表にも選ばれた野澤武史さんがスライドと映像を使って「ラグビーとは何か」を解説するコーナーから始まりました。
ラグビーの人数、得点方法、ルールに始まり、以前にTV番組で放送された「ラグビーのポジションを動物にたとえたら」を紹介。ゾウ、サイ、キリンやチータがひしめく中で、野澤さん自身のポジション(フランカー)は「ゴリラ」だとか。ラグビーの何たるかが野澤さんの軽妙なトークで解説された後は、現役時代の貴重な試合映像も披露。解説者の高評価に、客席からは感嘆の声も上がっていました。



後半はleccaさんを交えてのトークセッションに。新曲「team try」制作にあたって、野澤さんからラグビーについての話をたくさん聞いていたというleccaさんは、チームプレーが重視されるラグビーの「利他の精神」に感じるものがあったと話しますが、野澤さんは「自己満なんですよ」と自嘲。お二人のやりとりには笑いが起きる場面も多々ありました。
トークの話題は「ピンチになったらいなくなるヤツはよくいる」などの「ラグビーあるある」から、「一人では向かっていけないような強豪外国チームにも、チームでなら立ち向かえる」といった深い話まで、幅広い範囲に及びました。参加された方々は、ラグビーという競技の持つ奥深さが伝わったのではないでしょうか。全部で90分の予定時間があっという間に過ぎました。
というわけでこの後は、イベント終了後に収録したお二人の対談をお届けしましょう!


lecca × 野澤武史対談──ズバリ、日本代表は勝ち進めるの?

 

──イベントお疲れ様でした。本日進行をさせていただきます、漫画家のてらわかよしこと申します。さて、いよいよラグビーワールドカップ開幕が目前に迫ってきましたね。

野澤 いやもう、僕からすると夢のようなことが現実に日本に来たっていうことで、楽しみとかワクワクを通り越して、こっちまで緊張しているような感じです(笑)。

lecca 私はラグビーをやっているわけではないですが、選手やOBの方々からすると、連綿と続いてきた歴史、先人たちが築いてきた日本ラグビーのシーンがあって、それが世界に挑んで今は世界ランキング10位にまで来たということで、すごくレベルが上がっているんですよね。でもそうなるまでに、たぶん目には見えない、スポットライトも浴びてない、いろんな方々がいるんだろうなと思っていて、それが結実する瞬間というのが見られるというのはすごいことですよね。イベントの中で野澤さんは「今回、日本はベスト4行ける」とおっしゃっていましたが、日本が現状どこまで来ているのかという手応えを得られる機会になるだろうから、いろんな人が固唾を呑んで見守っているんだろうなと思います。

──実は私も、4年前の南アフリカ・ワールドカップをきっかけにラグビーにハマったものでして(笑)。

野澤 あっ、そうですか! 一番いい時にラグビーに出会ったわけですね(笑)。

──それで「あっ、日本でやるんだ! これは見に行かなくては!」と思ったんですが、チケットがなかなか取れなくて(笑)。また、興味を持って見るようになると、やっぱりラグビーのルールがちょっととっつきにくいというか、周りからも「分かりにくい」という声を聞くんですよね。

野澤 やっぱりそこが、敬遠される一番の理由なのかなと思いますね。たくさんの選手がグシャグシャッとなっている中で、ボールがどこにあるかすら分からないと(笑)。「何が起こってるんだ?」みたいなところがあると思うので、なるべくシンプルに伝えることで、ファンの人がより増えるんじゃないかなと思いますね。

lecca トークイベントの中では、「ラグビーは陣取り合戦」ということと、覚えるべきルールは「ボールの前でプレーしてはいけない」「倒れた選手はプレーしてはいけない」の2つだけ、ということを説明されていましたよね。

──にわかファンとしては、やっぱり「勝つ瞬間」が一番見たいですし、一番盛り上がるのかなと思うんですが、今回のワールドカップでは、日本代表はどういう戦いを見せてくれそうですか?

野澤 今回、日本は北半球の強いチームが多いプールAに入っていまして、そこで2位以上になると決勝トーナメントに残れるんです。アイルランドとスコットランドのどちらかには勝って、残りのロシアとサモアには絶対に勝つということでいくと、残れるんじゃないかと思います。ちなみに僕が現役の時は、サモアに69対8だかで負けたことがあります(笑)。

lecca そうですか……(ため息交じりに)。

野澤 だから、それだけ今の日本代表が強くなってるってことだと思うんですよね。プール戦も含めて選手たちが活躍する場面、そして日本代表が勝利する場面はけっこう見られると思いますよ。また、TV観戦もいいんですが、今回はライブビューイングが充実してるんですよ。全国の「ファンゾーン」と呼ばれる特設会場で、大スクリーンで見られます。自宅で落ち着いて見るのもいいですけど、みんなで集まって見るとまた楽しさが違いますからね。一緒に盛り上がることで、熱狂の中に入っていただければなと。


ラグビーと言えばビール!? 謎の合い言葉「バッファロー」とは?


──ラグビーと言えば、観客がものすごい量のビールを飲むという話がありますよね。
 


野澤 そうですね。最初の30分でだいたい13杯ぐらいは……。

lecca ええっ!? そんなに飲んでるんですか?

野澤 はい。「ゴクゴク」じゃないんですよ。(上を向いて口を開け)「サーーーーッ!」っていう感じで(笑)。

lecca ノドで止めずに?

野澤 そう、ノドには止める機能があるんですけど、そこで止めずに開けっぱなしにして飲むと。ノドの中にこぼしてるという感じですね。

lecca こぼすんだ(笑)。

野澤 そもそもラグビーでは、試合後に「アフターマッチファンクション」と言って、戦った両チームでメシを食うという習慣があるんです。そこでビールのリレーがあるんですね。飲んでジョッキを空けたら、逆さにして頭の上に乗せるんですよ。そこで残ってたらかかっちゃいますからね。

lecca 楽しそう(笑)。それは万国共通なんですか?

野澤 そうですね。だから飲めない人は大変ですよ。

──それに関連して、「バッファロー」というかけ声のことを聞いたことがあるんですが……。

野澤 よくご存じで(笑)。ラガーマンは、利き腕と逆の腕でお酒を持って飲まないといけないんですよ。これも全世界共通です。

lecca どうしてなんですか?

野澤 理由はわかんないんですけど(笑)。僕も最初の頃、利き腕で持って飲んでいたら外国人選手から「バッファロー!」って言われて、「何だろう?」と思って飲み続けていたら、また「バッファロー!」って言われて、一気飲みしろと。誰もそのルール自体は教えてくれないんですよ。でもニュージーランドだろうがイングランドだろうが、誰でも「バッファロー!」のことは知ってます。またトイレに行って帰ってくると、「バッファロー」にするためにジョッキが逆側に移されてたりするんですよ。何の意味があんねん!みたいな。

lecca 面白い!(笑) 選手たちが敵味方で試合後に飲みに行くということは、もしかしたらファンの人たちもそうなんですか?

野澤 そうですね! 試合後にパブに飲みに行って遭遇すると、もう敵味方はなくて、みんな「仲間」なんです。だからラグビー場の客席って、どっち陣営っていうのがないんですよ。普通は左右とかで分かれてるじゃないですか。それがなくて、隣の席は相手国の人だったりするんです。試合後はノーサイドってよく言いますけど、試合中もノーサイドなんですよ。

lecca へえ~、それは面白いですね。敵味方を分けないっていうのは斬新ですよね。

──確かに、スタジアムに観戦に行った時に「どっちに座ればいいんだろう?」と思ったんですが、どっちでもよかったんですね(笑)。

野澤 そうなんです。だからサッカーで言う「フーリガン」みたいな人たちはいなくて、ほとんどケンカも起きないんです。

lecca そういうところも、ラグビーが高尚というか、普通の感覚とは違うところで戦っている人たちなんじゃないかと思っちゃう所以ですね。

野澤 大男のラガーマンたちが酔って暴れたら、店を壊してしまって弁償とかになるじゃないですか。だからやめよう、っていう感覚ですよ(笑)。

lecca 学習してるんですね、すごいなあ(笑)。

野澤 そんな話だったら、いくらでもありますよ(笑)。

lecca そんな話ばっかりじゃ困ります(笑)。


ラグビーにとって釜石は「特別な場所」


──leccaさんは岩手県釜石市の観光親善大使でもいらっしゃいますよね。私は今回、釜石でのナミビアvsカナダ戦を観戦に行くんです。

野澤 僕は2015年のワールドカップで、どっちのチームの試合も解説してますよ。ナミビアはアフリカの国ですけど白人がほとんどで、パワー系のチームです。ボールを動かすカナダと、タテに突破するナミビアという図式になるんじゃないですかね。

──ナミビアはまだワールドカップで勝ったことがないですから、初勝利の瞬間が見られればと思ってるんです。

野澤 マニアックなカードではありますけど、そういうところで番狂わせが起きたりするんですよね。実力的には競ってるので、かなり面白い試合になると思いますよ。ぜひビールを13杯飲んで、釜石にお金を落としていただければ(笑)。

lecca 釜石の新しいスタジアム(釜石鵜住居復興スタジアム)は、それ自体が見どころですよ。それと駅の近くの市場には釜石のおいしい海産物がたくさん揃ってますので、ぜひ行ってみてください。お店はけっこう増えてるんですけど、産業がまだ復興できてないかなってところはあるんですよね。人口も減ったままなので。今回、このワールドカップで観光客の方はけっこう来てくださると思うんですが、その後がどうなるかですよね。

野澤 確かにそうですよね。でも釜石はやっぱり、他の土地に比べても盛り上げ方に気合いが入ってますよね。

 

lecca 東京にとってのラグビーと、釜石にとってのラグビーは違うんですよ。東京ではラグビーは「いろいろあるうちの一つ」で、来年にはオリンピック・パラリンピックもあって、どうしてもその「前哨戦」的な位置づけになっちゃってるんですよね。でも釜石ではラグビーの比重はかなりのものなので、正直、気合いの入り方が違います。子供たちにラグビーを教えてない学校はないぐらいですから。

──そんなにですか!

lecca 行政の方でも、市議会議員さんとかにもラグビーのOBの方がいっぱいいるんです。だから町を挙げて文化ができてるっていう感じはありますね。

──試合は全国で開催されますが、その中でも釜石は特別なんですね。

lecca そうだと思います。

野澤 やっぱり代表メンバーも特別な場所っていうことは理解してます。あのスタジアムは復興の象徴なんですよね。先日もあそこでトライアルマッチの第1戦をフィジーと戦ったんですけど、相手国の選手も特別な場所だっていうことはわかってました。

lecca 釜石はもともと、「鉄と魚の街」って言ってて、先日も市政80周年の式典が行われたんですが、そこで市長さんも「これからは『鉄と魚とラグビーの街』と言っていこう。頑張ろう!」っておっしゃっていました。他の街とは違って、「釜石にはラグビーがあるんだ!」っていうのは、行くたびに教えられていました。

──そもそも釜石とはどういう縁だったんですか?

lecca 最初は復興関連だったんです。自分のバンドのマスターでベーシストの方が釜石に住んでいて、「岩手を助けてくれないか」みたいなお話があって、2013年から観光親善大使をやらせていただくようになりました。それでたびたび行くようになったんですが……こっちからは聞いてないんですよ、聞いてないんですけど、行くたびにラグビーの話をされるんですよ(笑)。釜石の話をしてるはずが、いつの間にかラグビーの話になってて。「どうしてここに来るとラグビーの話になるのかな?」って不思議に思ってたんですけど、ひもといてみれば歴史的に自然なことだったんだなと。

野澤 そうですね、新日鉄釜石の日本選手権7連覇(1978~84年)があった場所ですから。新日鉄釜石というのは、すごく特殊なチームだったんですよ。高卒の叩き上げから鍛えられた、「東北の鉄人」と呼ばれる集団が勝ったということで。私がいた神戸製鋼もその後に7連覇(89~95年)を達成するんですけど、神戸製鋼は「スター軍団」と言われていて、そこは全然違うんですよね。

lecca 神戸製鋼も7連覇してたんですね(笑)。

野澤 そうです、実はしてたんですよ(笑)。新日鉄釜石は東北ラグビーが強かった頃の象徴で、鍛えに鍛えた選手たちが泥臭いラグビーを展開していたんです。

lecca 新日鉄も当時は工場が稼働していて、人口も今より全然多かったんですよね。今は当時の3分の1以下になってしまっているんですが。お子さんの数もそうだし、ラグビー人口も最盛期から比べると寂しいものになっているんですが、ただ、皆さんがその象徴を忘れず、ずっと胸に抱いているんだろうなというのは行くたびに感じるところですね。


新曲「team try」に込められた思いとは?

 

──今回配信されたleccaさんの新曲「team try」はラグビーをテーマにした曲ということですよね。ラグビーの応援歌というと勇ましい感じの曲を想像してしまいますが、「みんなで一つになって頑張ろう」という荘厳な曲調になっていますね。この曲は、どういう思いが込められたものなんでしょうか。

lecca 「ラグビーの曲を」ということで作り始めた時には、漠然としたイメージしかなかったんです。そこで野澤さんから、ラグビーをやっている方がどう考えてこの競技に接してきたかとか、精神的な部分のお話も伺っていろいろと考えたんですね。それで、ラグビーの方たちが戦っているものというのは、かなりいろんなところに通じるものなんじゃないかと思い至ったのが、この曲を作るきっかけの一つになりました。私は音楽だけじゃなくて東京都議会議員もやらせていただいているんですが、やっぱり音楽というのは自分のワンマンで進めていけるところがあるんですね。でも議員の方はいろんな人たちと一つになって、「これに向かっていこう」という形でやっていかないと難しい。そういう中で、チームで何かの目標に向かっていくというところを、ラグビーの選手たちはどうやって実現しているのかというところが知りたくて、野澤さんにお話を伺ったんです。それがすごく勉強になって。
今日のイベントの中でも、お話を伺って「おっ!」と思ったんですが、ラグビーでは誰のことも見捨てないんですね。ついてこれない人、違う方向を向いている人、先走ってる人、逆に力を抜いちゃってる人。「そういう人がいる時にどうしますか?」という質問を今日もしたんですが、音楽をやってる私の感覚から言うと、「ついてこれない人はついてこなくていいよ」って言いながら進んでいくしかないんですよ。それで「残った人だけでやろうね」っていう、ある程度の冷たさというか厳しさというか、そういうところはあるかなと思っていて。でもラグビーをやっている人たちは、基本的に見捨てない、基本的に離れない。「それがチームなのか!」と思って、目からウロコじゃないんですけども。

野澤 確かにラグビーはそういう世界ですね。

 

lecca チームで活動する、勝利に向かっていくということを30年やってらっしゃる方なので、どうやったらそれができるのかというところがまずお聞きしたかったんですが、そこをはじめとしていろんなことを教えていただいて。これは普通に会社で仕事をしている人もそうですが、「それ、自分の目標じゃないんだけど」っていうことを目指さなきゃいけない時もありますよね。そういう時に本気を出せるかっていうところを学ばせてもらえました。普通の感覚で言うと、チームで「今月はこういう目標を立てました! みんなでやりますよ!」って言われても、誰か一人は「えーっ。私、別にそれはやりたくないんだけど……」って思ってるかもしれないじゃないですか。そんな時にチーム・マネージメントをやられてきた野澤さんみたいな方がいると、うまくチームに引き寄せてくれるんだろうなと。「どうしたら、自分一人の生き方ではなくてチームで生きることができるんだろう」っていう目線と、「どうしたらチームがまとまって、結果に向かって行けるんだろう」ということを、曲を作りながら考えていました。
野澤さんと話す中で、自分が一人でやっている感覚だけではなくて、いろんな流れを汲んで、その流れの中でいろんな人からもらったものを背負ってやっている感覚というものがあるんだなあというのを感じたんですね。その感覚を持つか持たないかで、自分の振る舞いって変わってくると思うんですよ。そういうところを、何となーく歌詞にしていこうかなと思いまして(笑)。

野澤 leccaさんの「My measure」っていう歌があるじゃないですか。あの中に「いま自分のものさしで歩いていこう」っていう歌詞がありますが、それで言うとラグビーでは常に2本のものさしを持っていなければいけないんですよ。「俺」のものさしと、「チーム」のものさし。それがないと、ラグビーを楽しめなくなってしまうんです。「俺がやりたいことがうまくいかないから、今日は帰るわ」って言われちゃうと、試合にならなくなっちゃうんで。

lecca そうか! そうですよねえ。

──それは、チームのために妥協するというのともまた違った感覚ですよね。

野澤 妥協ではなくて、味方とか敵すら使ってやろうというか。ユースの選手たちに、「6番目の嵐」という話をよくするんですよ。

lecca 6番目の嵐?

野澤 「お前が嵐に6人目のメンバーとして入るとしたら、どういうキャラで入るか考えてみろよ」ってことなんです。

lecca ああ~、なるほど!

野澤 俳優役だったら二宮君がいるし、司会だったら櫻井君がいるだろ! じゃあお前はどの役なんだよ? と。だから、「俺は俺」っていうのはもちろんあるんです。でもそれ以外に、「じゃあ筋肉マン役で」とか「ギャグ・キャラで入ります」とか、チームに合わせてアクションとリアクションを起こしていくということが、ラグビーには必ずあるわけです。

lecca 自分のものさしとチームのものさしがあって、その2つは常にリンクさせているわけですね。

野澤 そういうことです。活躍している選手というのは、どちらかを犠牲にしたり妥協したりするのではなくて、ものさし自体を使ってやるという感覚ですよね。

lecca それって、すごくいい関わり方ですよね。

野澤 いやあ、みんな楽観的なだけなんじゃないかと思います。悲観的だとラグビーはできないので。


“戦う音楽”レゲエと出会ってポジティブに変化


lecca でも、責任もあるじゃないですか。それぞれの任務もあるし、チームから託されているそのポジションの重みもあるだろうし。そこは自分が貢献するぞという気持ちがあるわけですよね。

野澤 もちろんそうですね。でもそれとは別に、自分の目標というか、「これをやるためにラグビーをやってます」というものがないと、それこそチームや他人のものさしだけだとしんどくなってしまうので。

lecca そうですよね。さっき聞いたんですが、かなりチームの中でやりとりをするらしいんですよ。キャプテンとも1対1で話すと。でも、チームを目指しているところだけではキツいから、自分一人の瞑想の時間なんかも持ったりするんですか?

野澤 今、選手たちの間で瞑想が流行ってるんですよ。瞑想って、経営者の間でも流行ってるんですよね?

lecca そうそう。すごく流行ってますね!

野澤 そういう時間を1分でもいいから持つことで、頭の中をクリアにして、また進んでいくと。たぶん今、日本代表チームの選手たちもやってるんじゃないですかね。

lecca それはすごいことですよ! 「究極のチームプレー」と「自分を持って」という状態を、日々行ったり来たりして練習しているわけですから。

野澤 たぶんleccaさんも、シンガーとしての自分、議員をやっている自分、お母さんとしての自分を常に行き来させていますよね。その中で、こっちではいいことでも、必ずしも他でもいいわけではないということもありますよね。それをうまく回しているんだと思うんです。ラグビーもそうで、試合中の激しい自分がいつもいるわけではなくて、試合以外の時は穏やかな選手が多いんですよ。「プライベートぐらい、静かにさせてくれよ」と(笑)。

lecca へえ~、そうなんですね(笑)。

野澤 だからスポーツ選手がleccaさんの書く歌詞に共感するのは、leccaさん自身がいろんな立場の中で回している感覚があるからなのかなとも思いますね。

lecca ありがとうございます。

野澤 僕はleccaさんの曲を聴いて、最初は「底抜けにポジティブな方なのかな」と思ったんです。曲のテンポもそうだし、前に向かっていくという歌詞もそうだし。でも、関係者の方から「彼女は究極のポジティブってわけじゃないんだよね」って伺って。そこが面白いなと思っていて。人間って、やらなきゃいけないからやるっていうことも、絶対にあるじゃないですか。人生はやりたいことだけでは構成できないので。でも、やらなきゃいけないことに対して自分がどう向かっていかなきゃいけないのか、自分の人生をどうやって咀嚼して消化していくのか、というところはすごく悩むところで、答えがないんですよ。アスリートはその道で生きていくしかないんですが、その中でleccaさんの曲を聴くとフラットなところに立ち返れるというか、そういう部分で感銘を受けるんじゃないかと思うんです。僕の後輩で、前回のワールドカップでは代表に選ばれた山田章仁という選手も、leccaさんの曲が大好きだと言ってました。

──アスリートの心に刺さるものがあるんですね。

野澤 人間って、ポジティブでいるのはネガティブでいるよりも疲れると思うんですよ。文句を言って他人のせいにしていた方が絶対に楽なので。でも、アスリートはそこをポジティブにせざるを得ないんです。その中で、自分の一番好きなことでご飯を食べているのに、それが一番でなくなってしまう苦しみや悔しさは絶対に出てくる。そういう時にleccaさんの歌詞が刺さるんだと思うんです。

lecca 人は「ポジティブを演じる強さ」みたいなものも培わないといけないですよね。私も、もともとは全然ポジティブじゃないので。

野澤 そこが驚きですよね(笑)。

 

lecca いやいや、ホントなんですよ。だから20歳の頃に書いてた歌詞は全然今と違うんです。あの頃はホントにグチャグチャと人のせいにするようなものばかりで(笑)、今見ると「どこに行きたいの?」っていう感じで。でもそんな頃に、すごくポジティブなジャパレゲ(ジャパニーズ・レゲエ)というものに出会ったんです。ジャパレゲというのは、心の中の傷ついた部分とかボロボロになっている部分をどう癒やして、それをどう補強して、その子にどう鎧を着せて武器を持たせて前に進ませるか、っていうもので、まさにレベル(Rebel=反逆者)・ミュージック、戦う音楽なんです。そのレゲエミュージックに出会った時から曲の書き方も変わって、「出口が分かった!」と思いました。

野澤 へえ~! でも不思議ですよね。シンガーとして成功していたのに、また議員という新しい挑戦をしていくというところが。そういうところも、端から見たらすごくポジティブに見えるんですよ。バイタリティ溢れるタイプという印象を受けていたんですが、違ったんですね(笑)。

lecca そのへんの話はまた改めて、お酒を飲みながら語り合いましょう(笑)。この場ではとても語り尽くせないですから(笑)。

野澤 行かなきゃいけませんね(笑)。


ラグビーを出発点に、いろんな人に思いが届くように


──野澤さんは「team try」を聴かれて、どういう感想を持たれましたか?

野澤 感覚的な話なんですけど、画面が横にスクロールしていくんじゃなくて、タテに、上に向かってスクロールしていくように感じる歌というか。カラオケの画面でも歌詞は横にスクロールしていくと思うんですけど、聴いているうちに上に上がっていく感覚があるっていうんですかね。空中でラグビーの試合をやっていて、一番上にゴールラインがあって、そこに向かっていろんな人たちが上がっていくみたいなイメージですかね。だから試合前に聴かれていくだろうなっていうのと、ラグビーだけじゃなく他の競技の選手にもバッチリはまりそうだなと思いました。試合前の高揚感にピッタリというか。

──「try」というラグビー用語から出発しつつ、その言葉の意味を広くとらえた歌詞になっていますよね。

lecca おっしゃる通りです。ラグビーからいただいたものが元になっているので、タイトルに「try」という言葉を入れたいなとは思ったんですが、ディレクターとも話して、ラグビーに特化しすぎないようにしようと。聴いた人が、この歌詞を自分の物語にできた方がいいので、サッカーだったりバスケだったり、会社員の方だったら自分の仕事のことだったり、そこにはめられるぐらいの言葉遣いにしないとな、というのがありました。「渡されたパス」というフレーズなどはラグビーっぽいかなとは思うんですが、「パスを渡す」という言葉は普段の生活でも使うものなので、いろんな方に通じてくれるといいかなとは思うんですけども。

──野澤さんがleccaさんにお話しされたことが、この歌詞のベースになっているわけですよね。

野澤 そこはビックリしますよね(笑)。

lecca 2番の頭の「一対一じゃかなわない/でもチーム戦ならわからない」というところなんか、まさに野澤さんに伺ったところで、ちょっと印税をお支払いしないといけないですね(笑)。

野澤 じゃあレモンサワーでお願いします(笑)。

──そこはビールじゃなくていいんですか?

野澤 今ちょっと、糖質が気になってまして(笑)。

lecca 分かりました(笑)。でもラグビーの選手で野澤さんほど饒舌に、知性を持って語れる方って、なかなかいないんじゃないかと思うんですよ。

野澤 いるんですけど、みんな野に埋もれちゃってるんですよ。やっぱりみんな、日本代表ともなるとそれなりの格式を持ってしゃべるようになってしまうんですけど、今の僕はそういうのを全て取っ払って話せるので。

lecca 相手の目線に下りて、すごく分かりやすく説明できるのがすごいなと思うんですよ。

野澤 無口な選手に育ちたかったですよ(笑)。

lecca いやいや、今までいろんな方にラグビーの魅力について聞いても、まだ今ひとつ分からなかった部分が、野澤さんに聞いたら一回で分かっちゃったんですよ!

野澤 ありがたいですね(笑)。

lecca いろんなことを的確に、包み隠さず教えてくださったからこそ、初めてそこから曲にするということができたのかなと思います。


「レガシー」を「残す」ための努力を!


──さて、今回のワールドカップ開催でラグビーが盛り上がっているとは思うんですが、この後はどうなってほしいですか?

 

野澤 この後は……ラグビーが日本に根付いてほしいなというのが、正直なところですね。前回、2015年のワールドカップの後は、結局ラグビー人口が減っちゃったんですよ。「レガシー」という言葉が先行していて、みんな「レガシーは残る」って言うんですけど、「残る」じゃなくて「残す」努力をしないといけないんですよ。待ってるだけじゃ残らないな、というのをすごく感じました。今、日本ラグビー協会の清宮克幸副会長がラグビーのプロ化する計画を立てているんです。プロリーグを発足させて、参加チーム全部がユースのアカデミーを持つという構想なんですね。まだまだ夢の段階なんですが、それが実現して子供たちがラグビーをやる環境ができてくるといいなと思っています。あの楕円のボールは投げたら必ず変な風に転がるので、あれがグラウンドにあるだけでも子供たちにとっては面白いと思うんですよ。いろんなところにラグビーボールが転がってるような国になっててほしいなと思いますね。
構想では今回、試合が行われる全国12都市にチームを置くという構想になっているので、そうなれば釜石にもチームができて、それが復興の助けになるんじゃないかと。そうやって文化として残っていってほしいなと思います。

lecca 今野澤さんがおっしゃった通りで、行政はレガシー、レガシーって何かにつけて言うんですが、「レガシーの本当の意味を分かってくださいね」っていうところは、今後も言い続けたいと思ってるんですよ。レガシーは“その後”が大事なので。レガシーづくりのために最大限やってきたと言うんであれば、来年以降、子供たちがラグビーを体験できる場所、触れ合える場所が今よりも増えるんですね、ということは今後ともチェックしていかないといけない。やっぱりお母さんたちが「子供にやらせたい」と思わないと、なかなか広がらないと思うんですよね。

野澤 それは本当にそう思います。

lecca 私はたまたま音楽をやっているとうこともあるので、女性に対する啓発をもっとやった方がいいというのは、東京都にたびたびお願いをしています。女性が「ラグビーって……」と思っているままだと、ワールドカップをやっている時だけTVでは見るけど、ということになってしまうと思うんです。例えば広島カープなんかも、「カープ女子」と呼ばれる女性のファンがワッと増えたところを、そこからちゃんとうまくヘビーユーザーにつなげていってるんですよね。その結果、自分のお子さんだったりにやらせるという若い女性ファンが増えていくというのは、正直あると思います。だから家族を引き込んで、若いお母さんが「子供にやらせたい」というところまでいくにはどうすればいいかというと、今日のイベントみたいに、ラグビーの精神性の部分が今後にどう生かされていくのか、なぜラグビーOBに社会的な成功者が多いのか、というところを伝えるような機会がもっとあるといいなと。その成功の理由は、ラグビーがもともと持っているプレーの精神にあるところが多いと、今回改めて思いました。そういうところを女性向けにどんどん伝えていきたいなとは思っています。

野澤 leccaさんのこの歌も、いい入り口ですよね。今まで「何なんだろう、ラグビーって?」と思っていた方もいっぱいいると思うんですが、最近は「ノーサイド・ゲーム」というドラマも放送されているし、嵐と一緒にラグビー選手が出ているところもチョコチョコ目にしていると思うので、一度でいいから実際にラグビーを見ていただきたいなと思いますね。そうすれば魅力が伝わると思いますから。ラグビーにとっても、この盛り上がりがいいチャンスになればいいなと思います。

 

lecca 私も同じ気持ちです。入り口はどこでもいいと思うんですが、ラグビーの中には深くて普遍的なテーマが隠れていると思うんです。今日のイベントの後の懇親会で、介護職で働かれている方が「team try」を聴いて「一人ではできないことがチームではできるということが、すごく分かる気がします」と言ってくださって。スポーツって、そのスポーツをやっていない人にも勇気を与えるものだと思うんですが、それはその選手たちがどんな葛藤を持って、どんな壁を乗り越えてそこに立っているのかを知った時、そしてその人たちがどうやって結果を出したのかというところまでつながっていくと、さらに盛り上がると思うんです。たぶん、ラグビーについて知れば知るほど、本番の盛り上がりで自分たちに返ってくるものもきっとあると思うので、にわかでも何でも、まずは扉を開けてみるということをやっていただきたいと思います。

──「アメフトと見分けがつかない」とはもう言わせないと(笑)。

野澤 ホントそれです! ラグビーあるあるですよ!(笑)
 
インタビュアー てらかわよしこ
撮影 木川将史

 
lecca「team try」
2019.9.18 配信スタート

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高崎計三
WRITTEN BY高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。

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